チュートリアル「勾配法による最適化~分子科学から機械学習まで~」「数理モデルによる社会現象の記述の方法 」を開催します
2023年2月16日(木)14時~ 「勾配法による最適化~分子科学から機械学習まで~」および2023年3月10日(金)15時~「数理モデルによる社会現象の記述の方法」 いずれもハイブリッド(対面:駒場Iキャンパス16号館8階827室、オンライン:zoomミーティング)で開催します。下記の登録フォームにて参加登録ください(新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から個別に連絡をする場合があったり、zoomミーティングURLを配信したりするため)。
「勾配法による最適化~分子科学から機械学習まで~」登壇者:竹内啓志、髙羽悠樹、片岡麻輝(総合文化研究科広域科学専攻 修士課程生)
「最も安定した分子構造を知りたい」、「より学習された関数を求めたい」、科学の分野には何かを最適化したいという問題であふれている。このような問題は何らかのコスト関数の最小値を求めるという問題に置き換わる。しかし、必ずしもその関数の全容を把握することは難しく、局所的な情報のみから最小値を求めるアルゴリズムが必要とされる。このチュートリアルでは連続なコスト関数の最適化手法の一つである勾配法の入門演習と分子科学、機械学習に現れる応用的な手法や実装のテクニックの紹介を行う。目標は簡単な一変数関数の最小値を求めることである。
このチュートリアルでこんなことが分かります!
・どうして数値計算を使うの?
・勾配法ってどんな手法?どんな問題に使える?
・具体的にどうやって計算するの。
※数値計算にはpythonを用いますが、Google Colaboratoryを用いるため環境構築は不要です。
※豊富なサンプルコードを用意していますので、pythonやプログラミングができなくても大歓迎です!
「数理モデルによる社会現象の記述の方法」登壇者:板尾健司(総合文化研究科広域科学専攻 博士課程生)
数理モデルによる推論は、今や自然科学や経済学などに留まらず、人文学及び社会科学においても一般的な方法である。これまでに様々な分野において多くのモデルが提案され、たくさんの現象を説明してきているが、一方で目の前にある現象に対していかにモデルを構築するかという方法論が確立しているとは言い難い。そこで、本講演ではまず数理モデルにより現象を記述するとはどういうことかを問うことから出発して、モデル構築者が現象を記述するときの問題意識によって定まる記述のレベルに忠実なモデルが「良い」モデルであるための必要条件であることを述べる。ついで、記述のレベルの基本的な軸として抽象性、階層性、作用する力の種類という観点を導入する。主に文化進化分野におけるモデル研究の例を紹介しつつ、記述のレベルに応じてモデルの形式がある程度決定されることを示す。後半では、前半の方法論の適用例を示す。そこでは、多くの伝統的な小規模社会において観察される、文化的同胞集団内での婚姻を禁じ、他集団の成員を選好する規則の進化を数理モデルで議論する。この例について観察事実の整理と記述のレベルの設定から、モデルがある種の必然性を持って導かれることを納得していただくことが後半の目標である。また、記述のレベルを変えたときに可能なモデルのバリアントを示すことで、記述のレベルとモデルの形式の関係について具体的に示す。本講演が自ら数理モデルを構築することや、他人のモデルを解釈することのために、わずかでも有用な知見をもたらすことを願う。